少年探偵のデジタル・スケッチパッド 第1巻 書籍カバー

Novel / Vol.1 — 発売中

少年探偵のデジタル・スケッチパッド 第1巻

東京から、加須へ。
一台の「デジタル・スケッチパッド」を手に、
少年と少女が、街に眠る"見えない歴史"を辿りはじめる。

Details — 書誌情報

  • タイトル少年探偵のデジタル・スケッチパッド 第1巻
  • 著者楠柾(Masaki Kusunoki)
  • 発行クスノキ出版
  • 発売元紡出版
  • ISBN978-4-9914597-0-2
  • ジャンル児童文学/謎解き
  • 形態Kindle電子書籍・紙書籍(並製・カバー装)
  • 判型四六判(127×188mm)
  • 発売日2025年12月1日(発売中)
  • 定価¥1,500(税込)
  • ふりがなすべての漢字にふりがな付き(総ルビ)
  • おすすめ小学校高学年から大人まで
  • 言語日本語

Preview

試し読み

物語の入り口を、二つの場面から。

雨の車内、加須へ向かう悠人

序章 / 引っ越しの道

 東京を出てから一時間と二十三分。

 スピードメーターは加速と減速を七十二回繰り返した。僕は、数えるのをやめた。

 段ボールを積んだ車の後部座席で、僕は窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めていた。雨粒が叩きつけるフロントガラスの向こう、首都高のビル群が灰色の壁のように流れていく。聞き慣れた車の走行音だけが、やけに大きく響いていた。

「新しい学校、楽しみだな」

 運転席の父さんが、バックミラー越しに明るく言った。でも、僕は「……別に」と短く返すのが精一杯だった。東京の学校には、昨日まで一緒に笑い合っていた友達がいた。もう、あの教室には戻れない。シートに背中を預け、僕は小さくため息をついた。

──やがて、車は加須インターで東北自動車道を降りた。目の前をふさいでいた高い防音壁はなくなり、空が急に広くなった。

街の境にひそんでいた、古いしるし

第六章 / 三県境への旅

「悠人くん、落ち着いて」

 穂乃香の手が、僕の手をそっと握った。小さくて、少し汗ばんでいる、確かな温度。その温かさが、頭の奥まで届いて、僕はようやく息を吐いた。

「デジタルがダメなら、自分たちの目で見ればいいよ。おじいちゃんはいつも言ってた。『答えはいつも、足元にある』って」

 自分たちの目。僕は深呼吸をして、顔を上げた。真っ暗な画面ではなく、目の前に広がる『本物の景色』を見る。Y字に整備された用水路。区画整理された田んぼ。点在する古い石碑。健三さんは、この風景の『何』を見て、ここに隠そうと決めたんだろう。

──デジタルが沈黙したその先で、僕たちは"アナログな感性"と"記憶"を頼りに進む。

──物語の続きは、本編で。